幻影都市の亡霊

「あんたは知らないかもしれない。ユアファの子供は、あんたの子だよ。名前はウェインだ。本当に、いい子なんだが……ユアファの息子だってことで苦労していたみたいだ。影を背負ってる。大人びた子に育った。会えるといいね、それじゃあ」

 軽く会釈をすると、二人は大きな建物へと入っていった。しばらく呆然とそこに立っていたウィンレオの右袖を、ラムが引っ張った。我に返って、

「さ、行くか」

 そしてその路地を左に曲がった。と、橙の色が目に入り、ウィンレオは硬直した。橙の亡霊が支えている、女性――。

「あ……」

 ウィンレオの目が開かれる。それをラムが支え、コロテスは、目に入ったアクエムのもとへと歩んでいった。それに、アクエムが気づき、敬礼した。そして、うずくまっていた女性は、顔を上げたのである。その人と、眼が合った。コロテスは深々と頭を下げた。女性は立ち上がり、

「貴方は?」
「コロテス=ファザール=エンドストロールです、ユアファ=ストロール様」

 女性の、ユアファの顔に恐怖にも似た感情が張り付いた。

「……エンドストロール……?」
「父が、会いに来ました」

 そして、そこに、亡霊王が現れた。

「ウィン……レオ……」

 呆然と、ユアファが声をもらした。そして、夢を見ているかのように、涙を流した。

「なんで、来たのよ……」
「会いたかったからだ、ユアファ!」

 ウィンレオは力強くユアファを抱きしめた。ユアファも、泣きながら抱き返した。

「ウィンレオ……ウィンレオっ!」

 コロテスとラムはどこか安堵したふうに二人を見ていた。アクエムも、そっとコロテス達の隣に移動した。

「ユアファ様はとても美しくていらっしゃるのね」

 小声でラムが兄に言う。

「ああ」

 美しかった母親を思い出し、コロテスは思った。