幻影都市の亡霊

「……さ、行くか」
「はい」

 ウィンレオの歩みに、二人がついていく。現界の、人間の町というのを初めて見た二人は、物珍しそうにきょろきょろしていて、たまに、突然動かなくなった電子機器などがあると、興味深そうに覗き込んでいた。しかしウィンレオは、十八年前に歩き慣れた道を真っ直ぐ、かつてあの人と住んでいた家に向かって歩いていた。一歩歩むたびに、心がきりきりと痛む。と、そこに一つの大きな建物へ初老の女と、娘と思われる女が歩いていた。その初老の女性が驚いたようにウィンレオを見て、

「あんた……ウィンレオか?」

 ウィンレオは驚いてその人を見た。確かに自分は十八年前ここにいたのだ。自分を覚えている人がいてもおかしくはない。初老の女性は足を止めたウィンレオをまじまじと見つめ、破顔し、

「やっぱりウィンレオじゃないかっ! 久しぶりだねぇ。ウェインが生まれる前だから、十八年前ぶりか?」

 ウィンレオはしばらくその女性の顔を見つめ、

「スターコットさん?」
「覚えていたか?いやぁ、とんでもないことになった。あんた、助けに来たのか?」
「まぁ、そんなところです」

 彼女のことは覚えていた。幼いユアファを本当の子供のように親身になって育ててくれた人だ。そして彼女はウィンレオ達の事情を知っている。彼女は後ろにいるラムとコロテスを見て、

「子供か?」
「はい」

 ウィンレオは肯いた。そこで、娘の方が思い出したように、

「あっ、そうか、ユアファさんの!」

 三十歳ほど彼女、当時は十二歳ほどだっただろうか、ウィンレオの方もああ、と、

「ユアラ、か」

 ユアラの方も笑って、

「本当にお久しぶりです。ウィンレオさん。やっぱり、ここは幻界なんですね?」
「今どちらに向かおうと?」

 スターコットは大きな建物を指差し、

「ユアファが言ったんだ。皆で集まっていて、と。突然、空が変わった。驚いたよ。機械が全部動かなくなって」

 ウィンレオは緊張した。そう、自分はすぐ近くに来ている。スターコットが気遣うように言った。