ユアファは気持ちを落ち着かせるために薬湯を作ろうとした。が、電子機器が使えないことを思い出し、舌打ちをする。
「……皆、大丈夫かな……」
皆を心配するというよりも、自分を落ち着かせるために、家の外へ出た。
通りを歩く。街の皆には、グループで集まってもらっている。そのそれぞれを覗いて、無事なのを確認して歩いていた。と、彼女はある気配に気づいた。
さっと杖を構える。通りの向こうから、橙色の女が歩いてきた。恐らくは、亡霊だろう。
〝来た……あたしが守らなきゃ。この町を……っ〟
その女はユアファを確認すると、ほっと安堵したような表情を浮かべた後、無表情なままユアファに近づいてきた。向こうは警戒していない。が、自分の近くにきたとき、ユアファは身の丈ほどもある杖を相手に突きつけた。
「それ以上近づかないで」
「アクエム=レーヴルドです。この町を守るために来ました」
「あぇっ、男?」
橙の亡霊――アクエムの声を聞いて、それが男だと知り、かすかに驚愕したユアファだった。
「……ウィンレオに言われて……?」
「はい」
その瞬間、ユアファは緊張の糸が切れて崩れ落ちた。それを慌てて支えるアクエム。
「大丈夫ですか?」
「……来てくれて有難う……もう、どうしようかと……」
アクエムは無表情の上に笑みを浮かべて、
「安心してください」
「ここは、幻界なのね?」
「はい」
そして、ユアファは震える声で、
「……あの人が、ウィンレオが……いるのね?」
「はい。今、貴女のご子息がこちらへ向かっています」
「ウェインがっ?」
ユアファは驚いてアクエムを見た。彼は頷き、
「はい、先ほどお会いしました。彼はこの町を元に戻そうと――」
「ちょっと待って。どうやって……?」
アクエムは静かに伝えた。
「落ち着いてお聞きください。貴女のご子息は、王の器を持っていらっしゃる」
「っ……?」
ユアファの青い瞳が見開かれた。だが、自分の息子の器の大きさを、一番知っているのは自分だった。そして彼は――、
〝あの人の、息子だもの……〟
ユアファはそっと立ち上がった。

