幻影都市の亡霊

 ヨミが長い話を終えた後、誰が動くともなく炎を囲んでいた。ウェインは胸騒ぎがしてとても眠る気にもなれなかった。その膝の上で無邪気に小さな寝息を立てるファムを、半ば呆れたように見つめていた。と、そこに、

「使い魔だ、あれは……ゼロアスのじゃないか」

 セレコスが言った。黒いもやはぱたぱたとはためいてそれぞれアルモ、アクエムの前で広がった。他の者には読み取れないが、本人達は読める。

「確認した」

 アクエムが言うと、しゅうんっと黒いもやは消えてしまった。アルモの方も同様だ。二人はほぼ同時に立ち上がり、

「王宮へ行きます」

 アルモはそう言って、

「一足先に、貴方の町へ行ってきます」

 アクエムはそう言い残して、その場から消えた。ウェインはそっとセレコスを見た。

「……今、母さんはここにいる。もしかして俺の父親は、会いに行くんじゃないか?」

 その問いに、ヨミもセレコスもしばらく考え、首を横に振った。

「あれは、哀しい男だ。俺はつくづく思うんだ。あいつは孤王だと。あいつの愛した者達は、あいつの手の届かない場所へと行ってしまう」
「だけど、今母さんは……」

 セレコスは首を横に振る。

「だから、会うのが怖いんだ、あいつは」
「なんで?」

 ウェインにはわからなかった。母親はそんな素振りは見せなかった。だが、絶対に会いたかったはずだ。父親の話をするときの、あの哀切の色は忘れられない。会いたかったら会えばいいのに、そう思った。