「……何度、絶望したか、わかるか……? 何度も近づこうとした。その度にそっと拒まれる……。拒まれるたび、俺は自分がいてはいけないのかとさえ感じた……。自分が近づこうとするのに、拒まれてしまうこと……怖かった。だから……オークが死んだとき……とても彼女の前には帰れなかった。彼が死んで……俺は弱りきった姿のはずだ。それを彼女に見せてしまえば、俺は彼女の意思を無視して押し付けてしまうことになる。それにそれでは……俺はとても立ち直れない……」

 ユアファは頷きながらウィンレオの隣に立ち、そっと抱きしめてやった。

「今、あたしの前ではいいから……。思い切り泣いても、思い切り怒っても……あたしは貴方を拒まないから。だからお願い、悲観しないで」

 ウィンレオは、そっとユアファを抱き返した。ウィンレオは首を横に振った。

「哀しくてどうしようもないんだ……。オークを死なせてしまった……これからどうやっていけばいいのかわからない……こんなに苦しくて、誰にも近づけないのなら、王なんかにならなければよかったのに……」

 ユアファは、震えている男の頭をなでながら、

「その貴方を王にしたのが、オークさんなのでしょう?そんなことを言ったら、オークさんと貴方は何のために出会った? 貴方とオークさんの思い出は、貴方の中でなかったことにして良いものなの?」

 男は首を横に振った。

「そうでしょう? だったら、いない人のことばかりを考えていても、あたし達は前には進めないのよ?」

 ウィンレオははっと、ユアファを見上げた。とてつもなく哀しみを秘めた瞳で、

「それでは、貴女は俺に彼を忘れろというのか?」

 ユアファは穏やかに微笑んで首を横に振った。