幻影都市の亡霊

「落ち着いてきたら自分から話してくれるのかと思った! でも、駄目だよ、自分を偽ったら!」
「自分を……偽る……?」

 ウィンレオは何を言われているのかわからないようだった。

「だから話して、何があったのか……」
「……友が死んだ。私のせいで。ただそれだけだ……」
「違う! あたしが話を聞いているのはクロリス王じゃなくてウィンレオ、貴方よ!」

 その言葉が、ウィンレオの胸に突き刺さった。一瞬、苦しくなり、あえぐ。

「お願い」
「……俺の……せいだった」

 呟くように言ったウィンレオに、ユアファはそっと手を離し、椅子に座りなおした。

「……亡霊王とは何のためにいるのか、知ってるか?」
「その大きな器で幻界を支えるため、じゃなかったかしら?」

 ウィンレオは肯いた。

「王の心が揺らげば、幻界も揺らぐ――。あの時、俺の心が歪んでいたのか、幻界に歪みができた……。そしたら、普段は森から出てこないような凶暴な生き物が……町へ入ってこようとした。それを、俺を王にした人が、俺の親友が……オークが守った。町を守ってくれた。だが彼は力を使いすぎて……死んでしまった・・俺の腕の中で……。なぁ、どうしたらいいんだ……?俺は……なんで心に歪みができたかもわからないんだ……。それなのに、大丈夫だと……。オークは最期に、大丈夫だって……何も大丈夫じゃないのに……」

 ユアファはそっと安堵し、うつむきながら肩を震わす男の頭をなでた。ウィンレオが顔を上げると、ユアファは一緒に泣いていた。

「貴方は、無理に自分を押し込めていたのよ」
「え……?」

 ウィンレオが訊き返す。ユアファが哀しそうな顔をして、そっと身を乗り出しウィンレオの頭を抱いた。