教師Aの授業記録



しかし教師Aはといえば、山下絵里の滅茶苦茶発言を、なぜかすべてまともに受け取っていた。


「駄目だ」


声高に叫ぶ。


「――こんなチャラついた男と一緒にさせてたまるか!
きっと後々に後悔するぞ。
絶対にずっと泣かされて、苦労するぞ」


……なんかすごいドラマが展開されている…。

残念ながら、田中だけはもう到底付いていけなかった。


山下絵里は普段のキャラを剥ぎ捨てて、ノリに乗っている。


「なんで、そこまで口挟んでくるんだ。あたいはてめぇにとって他人なんだろ。
だったら、もう関係ないじゃん」


「――関係無いことはない!」

「……はぁ?なんでだ?」

「それは……」


そこで教師Aはピタリと動きを止めた。

急に声の音量が小さくなる。


「……それは…だから……」


言葉の続きが見つからない様子で口をもごもごとさせる。

やがてまた、苦しそうに顔をしかめた。


「……だから……うっ…」


両手で頭を抱える。

とても痛むように、その手には力がこもっているようだった。


「……兄さん!」


山下絵里は元来の自分に戻って叫んだ。