……なんか主旨を完全に間違えてきているよーな気がする。
山下絵里の発言を聞いてそう思いながら、怯えまくる田中は声に出すに至らない。
「…めんどくせー。
なんか馬鹿らしくなってきたわ、もう。
てめーなんぞ一生金星人にでもオーソンにでもキングキドラにでもどうにでもなれっつーの」
彼女は投げやりにそう言ってふいっと目をそらし、再び「けっ」と唾を飛ばす。
「てめぇなんか、あたいがどうなったっていいって言うんだろ?
いいよ。もう。
あたいもあたいで自由に好きなことをやる」
そう宣言するやいなや、実に荒っぽい手つきで傍に居る田中の腕を掴んだ。
「あたい、こいつと一緒になるから」
堂々とそう言い放った。
田中は顎が外れんばかりに口を全開にして驚愕する。
「はっきり言えば、貰われてやるんだこいつに。
――もう既に、あたいの身も心もこいつのもんだから」
「……お、おい。何を勝手なことを言ってやがる!」
田中はいつになく慌てふためき、彼女の暴言(=妄言=虚言)を止めるべく叫んだ。
今の山下絵里は何もかもが滅茶苦茶だ。
しかし山下絵里はそっと隣の田中の耳に口を近づけ囁いた。
「ごめん。今は私に合わせて」
触れた息遣いに、田中は別の意味でドキリとした。

