「……俺の母さん、俺が幼い頃に死んじまったからあんま、記憶にはないんだけど…でも、いつも笑っててどんな辛いときも無理して笑ってた」
「………」
教授は窓に視線をむけた
「……癌だった。辛いはずなんだよ。でも、笑ってる記憶しかない…」
「会って、みたいですか?」
「ん?……会えるなら、ね」
教授が窓から私へと視線を移した
その瞳には深い悲しさが見えた
「って、なんかしんみりしたな!」
教授はおどけて、笑ってみせる
「マザコンじゃあねぇからな!」
「……わかりました。そういうことにしておいてあげます」

