彼だって殺人現場にいたんだ。

それなのにわたしを助けてくれた…

「杏子…それは亡くなった家族にも失礼よ。杏子の家族は…あなたに亡くなってほしいなんて思ってないはずよ…生きてくれてよかったって思ってるわ」

何故だろう。
千代の言葉はすごく安心する。

どんなに苦しい気持ちもすごく楽になる

「千代……ごめんね。それと…ありがとう」

私は生きてる。

いつまでもあのときのまま立ち止まってる訳にはいかないんだ。

「……杏子。私は、杏子の気持ちはわからないけど…憎しみとか復讐とかそんな気持ちも忘れろとは言わないけど…でも恋する気持ちを圧し殺すのはダメだよ?」

ニヤリと笑う千代。

「どういう意味?」
「そのうち、わかるんじゃない?素直な気持ちがね。杏子…なんでも絶対なんてないからね。これだけは覚えておいて」

絶対なんてない、か。

「うん」

ふと頭をよぎったのは
尚治教授だった。

「あー、それと。教授が途中で変わったり、助手を生徒から選ぶとかは珍しいみたいね」
「そうなの?」
「ま、これ以上のことはまだ分からないけど…また、調べたら知らせるね」

私は頷いて千代に頭を下げた

「ありがとう。千代がいなかったら…私はここにいないかもしれない」
「私はいつでも杏子の味方よ…」