「誰にも気づかれずに…誰にも知られずに私の家族は死んでいったの…それが、どんだけ時間がたっても…忘れない、忘れられない、忘れたくない憎しみ」
「杏子…」
「何もできない自分が悔しくて仕方なかった…確かに憎いのは殺した犯人……でもっ…一番憎くて憎くて仕方ないのは…自分自身」
「え?」

視界が涙で滲む。

「……何も知らずに…友達と遊んで…1人だけ生き残って…これなら……私も殺してくれた方がましだった…」
「それは違うよ!」

千代が私の言葉を大きな声で遮った。

反射的に顔をあげると千代は泣きそうな顔で
でも少し怒った顔でわたしを見ていた

「それは、違う……それじゃ杏子を守ってくれた人はどうなるの?あんな、自分だって殺されるかもしれない場所で杏子をたすけてくれたひとの気持ちはどうなるのよ?」
「っ!」

確かに、そうだ。