杏子side


「あれ、ここどこ?」

私はまた真っ暗な闇の中にいる

そこでわかる。
ここは夢なんだと…

「……起きなきゃ」

そう呟くと、後ろの方で声がする

「……?」

振り向くとそこには小学校高学年ぐらいの私がいた。

そしてそのそばで立ちすくむ高校生の男の子
幼い私は彼の目の前に立つ。

「…なに?」
「……お兄ちゃん悲しそうな顔してる」
「………そうかな?」

彼は悲しい微笑みを浮かべた。

誰、だっけ?

幼い私は彼の手を握る

「?」
「悲しいときにね…こうやって誰かに手を包まれるとね……安心するんだよ」
「……きみ、名前は?」
「……杏子」
「杏子……いい名前だね」

あぁ、覚えてる。
あの柔らかい笑顔
おぼろげにだけど…

彼にいい名前だと言われて嬉しかったんだ