「………ったく。案外、辛いな……」

俺は椅子に体を預け上を向いて
タバコの煙を見つめる

「…………」

目を閉じて春風の表情を思い浮かべた
ピアスを見つけたときの顔
俺がかばったときの照れた顔

「……ピアス、大事なものなんだな……」

青いピアスを大事そうに触れる春風。
なぜか俺が触られてるような気持ちになった

なんでこんなに
春風でいっぱいなんだろう

「あの時からだ………」

あの日、君を見つけたときから

絶望の淵にいた君を助けたときからだった…



俺は、尚治だ。

もうあの時の俺はいない

だから恨まれたっていい。
それで君が救えるなら

俺はまた右肘にふれる
そして少しだけ力をいれた

肘に爪のあとが残った……