「母さん、晴香ママには内緒で頼むね」


「わかった…行っておいで」


「いってきます」


憲吾は会社に向かう車の中で、晴香のことを考えていた。


幸せにするって約束したのに、晴香を悲しませる結果になりそうで胸が痛かった。


晴香は今何を考えているのだろう…


晴香ばかりに負担をかけてしまっている自分が情けなくて…悔しくて…目の前の信号がにじんで見える。


しっかりしなくては…


会社にいても、落ち着かない時間を過ごしていた。


社長といっても、憲吾には仕事が山積みになっていて、こなさなければ、帰ることは難しい。


昼になるまでやれるだけの仕事をこなしていた。


昼休み、会社を出る前に晴香に電話を入れてみる。


「晴香…体調はどう?」


「憲吾…お腹が痛いの…出血もあって…どうしよう…」


「わかった!今行くから。救急車呼ぶよ!大丈夫…待ってるから」