「良い心がけだ~俺も見習って頑張らないとな…」


「柴崎主任は…何故?」


「俺か…きっと仕事で忙しいことを理由に、家庭を妻に任せっきりだったんだろうな~気がついた時には、遅かったよ…」


「そうだったんですか。お子さんは?」


「1歳になる女の子がいる。でも…もう一生会うことはないだろうな」


「すみません…何だか辛いこと聞いてしまいましたね…」


「大丈夫だよ。君だけには正直に言っておくが、俺は気持ちを決めてから転勤してきたんだ。ただ、周りの目もあるからということで、半年間離婚を待ってもらったんだ。妻と娘は、妻の幼なじみに頼んで出てきた。いずれ二人は結婚するだろう…」


瑞希は泣いていた。


今の祐輝が、こんなに悲しい中にいたことなど知らずにいて、そんな胸のうちを、自分だけに話してくれたことに、涙がこぼれた。