「でもさ、俺はユウキのこと好きだからさ。泣いて謝ってきたアイツの頭、軽く叩いて笑った。いいんだよ、って。」


和泉先輩は、いつだってユウキ先輩を悪く言わない。


それは、本当にユウキ先輩のことが好きだから。


「でも・・・和泉先輩は凛堂さんのことが」


「大好きだったよ。本気で好きになった。だから、守りたかった。」


「守る?」


「あぁ。俺が停学になって、遥さんが泣いたんだ。そのとき思ったんだよ。俺が遥さんを守る。絶対に泣かせないって。それから恵梨香が生まれてから3ヶ月くらいは、俺はユウキの代わりに父親として務めてきたけど・・・実際、ユウキはちゃんとパパをこなしてた、ってわけ。ま。遥さんすぐに引っ越して連絡とれなくなったから、学校で会ったときビックリしたけどな。それは多分ユウキもじゃないか?」


「!!じゃあ、和泉先輩が守ろうとしてたのに、ユウキ先輩も同じように凛堂さんを守ってたんですか?」


「笑っちゃうだろ?俺は嘘でしか守れないから、だから・・・」


「嘘でもいいです。」


あたしが大声を出したのが、よほど驚いたのか和泉先輩は口を開けて、あたしを見た。


「嘘でも、あたし嬉しかったから。和泉先輩が楓にぃにだって知って、よかったって思ったから。本当のこと知る前に、和泉先輩が楓にぃにだったらいいのにな、って思ってたんです。だから、たとえ嘘でもあたしっ・・・」


言葉は続かなかった。止まったはずの涙がまた溢れる。


なんでこんなに泣いちゃうんだろう?


「紫苑・・・。」


「苦しかったですよね。嘘ついて平気でいられる、そんな人はいないですもん。・・・あたしも、なんでこんなに苦しまなくちゃいけないのか、わかんないです・・・。ただ、ユウキ先輩が好きなだけなのに・・・。」


和泉先輩は、黙ってあたしを抱きしめた。


壊れちゃうくらいに、力強くて、温かくて、優しかった。