「紫苑。」


あたしを呼ぶ声がして、あたしは振り向かずに言う。


「遅いですよ。」


「ごめん。帰りにちょっとあってさ。・・・隣いい?」


「はい。」


隣に腰を下ろす。


少し沈黙が続いた。どんどん暗くなっていく二人きりの公園。


どうしても話を切り出せなかった。


そんな沈黙を破ったのは、和泉先輩の一言だった。


「なぁ。」


「はい。」


「・・・もうやめようか。」


その一言が聞こえたとき、あたしの心の中で、何か細い張り詰めた糸がプツンと切れた。


「・・・え・・・?」


声が震える。涙がこぼれそうになる。


「気づいてるんだろ?」


返事はできなかった。


「俺が本当にバカだったよ。ごめん。」


もう、いいよ。


もういいから、何も言わないで・・・


「気づいたんだ。嘘で紫苑を喜ばせたつもりだったけど、その嘘がバレたときに一番傷つくのは紫苑だ、って・・・。」


「和泉先輩っ・・・!」


「ごめん、俺は紫苑のお兄ちゃんじゃないよ。」