バクバクと、高鳴る鼓動を押さえつけて、息を殺す。




泥棒なら、俺を襲って金目の物を盗むに違いない。




なぜか頭がそう確信していた。






「なんでいない?」



「しらなぁい。さっきまでいたんだけどねぇ。」



低い男の声と、甲高い女の声。








“さっきまでいた”?




泥棒は金目の物ではなく、俺を探しているんじゃないだろうか?




とりあえず、110番通報をしようと思い、ポケットにいれておいた携帯電話を取り出す。





指が震えていることに気付き、携帯電話を落とさないように注意する。



ソファーから顔を覗かせ、泥棒の様子を確認する。




「……よし…」



どうやらキッチンへ行ったらしく、二人の影は見えない。



素早く110番に電話を掛けると、すぐさま対応してくれた。






『はい。こちら…「あー!いたよー!」




背筋が凍る。


携帯電話が手から滑って、床にがしゃん!!と音を立てて落ちる。


背後で聞こえる甲高い声に、体が硬直する。



「こんなところに隠れていたのか。」




肩を乱暴に掴まれ、後ろに引かれる。




「ヴわぁ!!」



かなり強い力だったので、思いっきり床へ叩きつけられる。





仰向けの状態で、天井を見上げると、肩まで伸びた赤毛に鷲色の大きな瞳が印象的な少女と、黒髪のオールバックの大柄な青年が立っていた。


少女は興味深々と言いたげな瞳で俺を見つめ、青年は顔を顰め、俺をどう痛めつけようか考えている。



「な、な、なに!?」



素早く起き上がると、謎の泥棒二人に両腕を掴まれた。



「ちょーっと大人しくしてよねぇ。」





少女が俺に向かってウインクをする。






「どこ行くねん!?おいっ!」





そのまま器用に家具を避け、先ほど侵入してきた割れた窓ガラスから家の外へ出た。




「やめろ!お前らなんなんや!?」





「それは後から説明するからさ。今は黙ってついて来てよ。」






「ついて行けるかっ!離せ!!」



必死に両足をバタつかせていると、少女の瞳がギラリと鋭く光った。










「黙ってついて来いや。クソガキがぁ。」











「え……」








少女は眉間に皺を寄せ、“チッ”と舌打ちをすると、俺の腕を掴む力をさらに増した。






「悪いな。暫く眠ってもらう。」






さっきから黙っていたオールバックの男が、俺の顔を覗き込んで呟いた。





次の瞬間、腹部に強い衝撃が走った。