『修。あんた一軒家に一人暮らししてるんやって?』




2年振りに凛の母から連絡がきた。




丁度その頃俺は高校進学に向けて準備を始めていた。


親戚の叔父さんが名古屋に引っ越してしまい、元から住んでいた家を売ろうか悩んでいたところを俺がかりた。



家賃は払ってくれるし、俺にとっては好都合だった。



その情報をなぜか凛の母が聞きつけ、電話をしてきたのだ。




「そやけど…それがなに?」





『凛があんたの家の近くの高校に行きよんのよぉ。なんかええ物件ない?』






「凛ってどこの高校行くん?」




もしかしたら、俺が入学する高校に凛も来るかもしれない。と、期待を込めて聞く。







『蜂ノ川高校。まぁ、凛はアホやからなぁ。頑張って受けよったんやで?』




蜂ノ川高校といったら、偏差値は低いが、野球部や、サッカー部、バスケ部など様々な部活が盛んなスポーツ面での強豪校だ。




恐らく凛はバスケがしたくて受験をしたんだろう。




『修は有原学園やろ?よぉ受かったなぁ。』





「いやいや、親が受けろってうるさかったし。
まぁ、近所に不動屋さんもあるし、今度聞いとくわ。」


『ありがとうなぁ。じゃあ、また連絡するわ。』



「はーい。風邪引かんように。」


適当に話して、通話を切る。




携帯電話をそこらに放り投げ、ぼーっと考える。







もしかしたら、また凛に会えるかもしれない。




胸が高鳴る。


もう会えないと思っていた兄に会えるかもしれないのだ。



俺が通う有原学園と、凛が通う蜂ノ川高校は、2キロ程度の距離しか離れていない。


なので登下校の時や、普通に休みの日でも会える可能性が高いのだ。





「よっしゃあ!!」





両手を上にあげて心の底から叫ぶ。





いや、待てよ……


凛は学校に近い物件を探している。ということは、俺の家に住んでもらうのが一番手っ取り早いんじゃないか?




そう思い、もう一度凛の母に電話をし、凛の携帯電話の番号を聞き出した。



「よし。」



緊張で手が震えている。



久しぶりに聞く凛の声はどんな声なんだろう?





そんな些細なことでも気になる自分が少し気持ち悪かった。