ナイトがこちらを睨み、花村は目を見開いている。
「全部嘘やったんやろ!?どれもこれも…吸血鬼共が勝つためやろ!?俺なんかどうでもいいんやろ!?」
容赦無く罵り上げ、喚き散らす。
ナイトは黙って俺を見ていた。
「汚いねん!なにが誇り高い一族や!嘘ついて、人騙して後戻り出来んように仲間に取り入れて……」
もう感情がめちゃくちゃだ。
怒り、憎しみ、悲しみがぐちゃぐちゃに混ざり合い、とにかく目の前の醜い化け物を殺したい衝動に駆られる。
「お前らみたいな化け物っ…殺してやるっ…!!」
ゆっくり立ち上がり、ナイトを指差す。
腰に力が入らず、ふらついてしまう。
「凛!証拠がありませんよ!」
花村がナイトを庇うように前に立ちはだかり、叫ぶ。
「証拠なんてなくても分かるやろ!?俺を利用したことくらい!」
今更証拠があるかないか関係ない。
「凛…」
ナイトが花村を押しのけ、俺の目の前に立つ。
ナイトは瞬きひとつせず、こちらを見つめていた。
そして唇を噛み締め、ひざまずくと、額を地面につけた。
「……お前が言ったことは本当だ…凛の弟への気持ちにつけ込んだ…」
「っ……」
小さく、丸まったナイトの背中を蹴り飛ばしたい衝動に駆られる。
でもそうしたら、あまりにも子供っぽく、醜い行為に感じた。
「…謝って済むもんじゃないねん…」
俺は、森の出口へ駆け出した。
二人で住んでいたあの家へ______