「……やっぱりですか……」
出来れば起きてほしくなかった事態になってしまった。
まぁ、こんな赤裸々に初対面の俺に過去を話すってことはきっとなにか裏があるとは思っていた。
だが、まさかこんな大役だなんて…
「無理やわ!そんな大役!」
「んな大役でもねぇよ。お前は俺と“契約”をして、外の“偵察”に行ってもらうだけだ。」
ナイトが胸ポケットから煙草を取り出す。
「て、偵察?契約?」
「俺の血をお前に分けるんだよ。」
ナイトがテーブルの引き出しから、ナイフを取り出す。
ナイフが鈍く光り、俺の顔を写す。
「ちょ…ちょっと待てや…おい!」
「なんだ?ここまで話したんだぞ?」
ナイトが“なにを言っているんだこいつは”と、言いたげな目で俺を見つめた。
「俺の了解も無しに“契約”だの“偵察”だのおかしいやろ!?」
訳も分からないまま面倒な事に巻き込まれるのは御免だ。
「僕達の一族が狼人間を制圧するには凛の力が必要なんです!」
花村が俺を羽交い締めにする。
ナイトが不敵な笑みを浮かべながらナイフを構える。
「いやいやいや!あかんやろ!」
「おい夢。この野郎にまた変な花嗅がせろ。」
ジタバタと手足を動かし、必死に抵抗する。
今の話が本当かさえもわからないのに!
「ふざけんなっ!!
俺には俺の生活があるんや。嘘か本当か分からん怪しい者に俺の人生を奪われる訳にはいかへん!」
ナイトを睨みつけ、渾身の意見を放つ。
「……ほう…夢。そいつを離せ。」
「…でも……」
「いいから離せ。」
「……」
花村が腑に落ちないような顔で、俺を離す。
「今から三分間。考える有余をやろう。
選択肢は二つ。
一つはお前を殺す。
もう一つは俺と契約をする。」