「思ったより早く来れて良かった。」

わたしはあの後、できるだけ急いで
学校の花壇へ直行した。

「待っててね。今お水持ってくるよ。」

わたしの名前は、田中 衣織(タナカ イオリ)。
中学1年生です。

見ての通り、花壇の花に話しかけている
友達が居ない歴約6年。
そりゃあ親が心配するのも無理ない...かな。

「夏休みは全然来れなくてごめんね。」

水をあげながら、謝る。

風が吹き、
花は「いいよ。」というように
なだらかに揺れている。

何の取り柄も無いわたしには、
毎週水曜日のこの時間。

朝早く花壇に水遣りするくらいしかできない。

誰に気づかれなくても、
自分が何かをやっているという証拠?
みたいな、
自分がここにいる理由?
みたいな、
そうゆう実感がわたしは欲しかった。