「――それと…」

根本さんは言いにくそうに呟くと、
「1つだけ、言い忘れてたことがあったんだ」
と、言った。

「何をですか?」

聞き返したわたしに、根本さんはベッドのうえで正座をした。

わたしもつられて正座をする。

何だか重要な話のような気がしたからだ。

「平岡つぐみさん」

フルネームで、根本さんが名前を呼んだ。

「はい」

わたしは返事をした。

フルネームで名前を呼ばれたのって、一体何年ぶりだろうか?

専門学校の卒業式以来かも知れない。