ワイン恋物語

つかまれていない方の腕を何度も振り回した。

振り回している腕は、何度も空を切るだけだ。

「つー、落ち着いて!

冷静になって!」

「ヤだ、離して!」

視界が、真っ黒に染まる。

コンビニの外から見た、根本さんのTシャツだ。

「落ち着いて…。

そう、落ち着いて…」

背中をなでているのは、根本さんの大きな手だった。

「――離し、て…」

気持ちが落ち着いていくのが、自分でもよくわかった。

「大丈夫?」

根本さんがわたしの顔を覗き込んできた。