ワイン恋物語

…気づいて欲しくなかった。

…知られて欲しくなかった。

根本さんに、知られたくなかった。

「――あっ、つー!」

わたしはその場から逃げ出していた。

知られたくなかった。

気づかれたくなかった。

根本さんにだけは、知られたくなかった。

「つー、待って!」

根本さんに腕をつかまれた。

「嫌、離して!」

つかまれた腕を振り払おうとするけれど、男の強い力だから彼の手を振り払うことができない。