ワイン恋物語

根本さんは眼鏡の奥の瞳を悲しそうに細めて、
「つー、すごくつらそうな顔をしてるから」
と、言った。

「えっ…」

わたしは頬に手を当てた。

つらそうな顔って何…?

「傷ついてるって、顔をしてる」

根本さんの言葉に、わたしは首を横に振った。

「わたし、そんな顔…」

していないです、と言いたかった。

だけど、次の言葉が出てこない。

「つぐみー!」

彼女の声がうるさい。

しつこいなあ、人違いだって言ってんだからもう帰れよ。

心の中でわたしは毒づいた。