ワイン恋物語

「――い、行かないで…!」

離れたとたん、わたしはそう叫んでいた。

「えっ、つー?」

根本さんが訳がわからないと言う顔をしている。

その顔から目をそらすように、わたしはうつむいた。

わたし…今、何てことを言ったのよ…。

そんなことを思ったからって、わざわざ口に出さなくてもいいのに…。

今さら言ってしまった言葉が戻る訳がない。

「つー」

優しく根本さんに名前を呼ばれたと思ったら、わたしの頭のうえに彼の手が置かれた。