ワイン恋物語

胸がチクリと音を立てて痛んだ。

「仕事がキツかったからとか、お給料が安かったからとか、そんな理由で転職したの?」

続けて聞いてきた根本さんに、
「…そうですね、そんなところです」

わたしは答えた。

チクリと、胸がまた痛んだ。

2年前の話をしているだけだ。

終わったことだ。

何より、時効なんだから。

「つー?」

根本さんに顔を覗き込まれた。

「あ…根本さんは、ここに勤めて長いんですか?」

これ以上自分の話をしたくなかったから、話題を変えた。