ワイン恋物語

ソムリエだから、ワインセラーに入ることができた訳なのか。

そう思いながら、
「ありがとうございます」

わたしは言い返した。

根本さんは免許証をしまうと、
「つーは、調理師さんとして雇われたんだよね?」
と、聞いてきた。

「ええ、はい」

わたしは首を縦に振ってうなずいた。

「ここに雇われる前はどこにいたの?」

根本さんに聞かれただけだ。

どこに勤めていたかを、わたしは答えるだけだ。

「とある企業の、食堂で働いていました」

「食堂のお姉さん?」

そう言った根本さんに、
「…まあ、そんなところです」

わたしは首を縦に振ってうなずくと、ぶどうジュースをまた1口飲んだ。