ワイン恋物語

「はい、つー」

根本さんにグラスを差し出された。

相手は上司。

絶対に飲まなきゃ、ダメだよね?

「…ありがとう、ございます」

震える手を押さえながら、わたしは彼の手からグラスを受け取った。

透き通るような紫色は、まるで宝石のようだ。

もう、やけだ!

グラスに口をつけると、クイッと傾けた。

…んっ?

予想とは違った味に驚いて、グラスから口を離した。

「これ…」

グラスを指差したわたしに、
「バレた?」

根本さんはおどけたように舌を出した。