女子バスケ2年の綾乃さんにいつものよーに雑用を頼まれて、由美と一緒に体育館から出ると見知らぬ人がいた。
「あ~二人ともこっちだヨ!」
綾乃さんと楽しそうに話してる男の人。ユニフォームは…サッカー部。
「ありがとネー。」
チラッとその人を見た瞬間、目があった。
「こんにちは。バスケ部のマネージャー?俺、サッカー部の2年で綾乃と同中。」
「こんにちは…。」
緊張した。人見知りの性格はホントにやっかい。
「弥生ちゃんと由美ちゃん。こいつは浜田秀宏。一応サッカー部でキーパー。」
「よろしくネー。」

この日から毎日のよーに部活の休憩時間になると、浜田先輩はバスケ部に遊びにくるよーになった。
仲のいい同い年の先輩に会いにくるついでにいつも話しかけてくれた。
同い年の男子は「弥生さん」って呼ぶのが多かったけど、先輩達は「弥生ちゃん」ってゆってくれる。
その響きがやっぱり心地よかった。
馬庭先輩…。
好きになっても玉砕するのはわかってる。
はぁ。吹っ切ったと思ったら頭をよぎる名前。
…新しい恋しなきゃ。

待ちに待った夏休み!彼氏つくるぞー!!
…ってゆっても毎日部活。
ミーンミーン。セミの鳴き声の中、ポカリを作って汗だくで熱気ムンムンの体育館に行く…。その繰り返しの日々。
ウォータークーラーで水を汲んでいた時、後ろに気配を感じて振り返ると、浜田先輩がいた。
「こ!こんにちは!びっくりしたぁ~声かけて下さいヨー。」
「ハハハ!ゴメンネ。びっくりした?」
水道と違ってペットボトルに汲むのも時間がかかる。
浜田先輩は休憩中なのか座り込んでいた。
「…弥生ちゃんってさぁ、足細いよね。」
!!!
「そんなコトないですヨ!正直もっとやせたいです。」
「それ以上細くなってどーすんの?!」
びっくりしたぁ。浜田先輩に足見られてたなんて!
それから浜田先輩はあまり体育館にこなくなった。
それが原因とかじゃなく、ただ単に夏の大会や合宿で忙しかっただけ。
この時はまだ運命の出会いをしたコトに気付いてなかった。