仕事を終えて

マンションのエレベーターに乗りこむ。

扉が閉まったと同時に

一人のエレベーターに座り込む。

部屋は最上階の端っこ、1301。

「はぁ、疲れた。

足パンパンだよ。」


エレベーターが13階で泊まり

家の前まで歩く。

鍵穴に鍵を差し込もうとしたら

ドアが逆側からガチャと開いた。

「おかえり、綾女ちゃん。」

「な....なんで?」

「なんとなく綾女ちゃんが帰ってくる気がして

いつも気遣って呼び鈴おさないし

鍵も開けようとするし

もっと、僕に頼ってよ。」

綾女ちゃんより帰ってくるの早いんだしさ。

そう笑うのは

私の彼氏の新一くん。

大学生になってから

2人で一緒に暮らし始めた。

もう同棲して5年目になる。

新一くんも普通に仕事しているけど

私と違って

ちゃんと定時に帰れる仕事だ。

ゆっくり休んでればいいのに

新一くんは家事もしてくれる。

そんな彼に

私はとっても救われてる。

「なんでもかんでも頼るわけにはいかないよ」

「綾女ちゃんはすぐそういう。

頼られないのも結構辛いよ。

信頼されてないみたいで。」

「そんなことない!

私、すごく信頼してる。

ただ迷惑かけたくなくて....」

「わかってる。

それが綾女ちゃんの優しさで

俺は綾女ちゃんのそういうとこも好きだよ。

でも、綾女ちゃんは疲れてるんだから

気遣うことなんてないんだよ。」

新一くんがドアを大きく開けてくれた。

「お風呂、先、入る?

ご飯は出来てるよ。

今日はシチューにしたんだ。」

「シチュー食べたい!

先、ご飯食べてもいい?」

「うん。いいよ。」


私はいつだってあなたに救われてるんだよ。


私は食卓へと足を運んだ。