詩織が走り去っていくのを
俺は見ているしかできなかった。
なんであんなこと言うんだよ。
親友の綾女にあんなこと....
「薫くん。ごめんね。
私のせいでこんなことになって。」
「綾女はなんも悪くないって。
今日の詩織はなんかおかしいよ。」
「そうだね。おかしいね。
でも、恋をすると人は変わるよ。
いい意味でも悪い意味でも。」
そういうと綾女はニコリと笑った。
「恋?誰に?」
なんだか胸の中がモヤモヤする。
「詩織の気持ちより
まずは自分の気持ちに正直にならなきゃ。」
「えっ?」
「気づいてないの?
薫くん、すごくいい顔してるね。
詩織のこと、好きなんだね。」
綾女の言葉がすっと入ってくる。
戸惑いもなく
ただ納得できた。
好きだから
こんなにモヤモヤするんだな。
なんでわからなかったんだろう。
綾女の時に経験しているはずなのに
「ごめんね。薫くん。
私、きっと薫くんのこと
いっぱいいっぱい傷つけた。
でも、薫くんが背中を押してくれたから
私、今、すごく幸せだよ。
だから、今度は私が
薫くんの背中を押す番。
不器用だけど
優しくて
強く見えるけど
本当はか弱い
私のかけがえない親友を
よろしくお願いします。」
綾女は1つ頭を下げた。

