「んっグ....グ....」
涙を止めるすべなんて思いつかなかった。
ただ屋上でひたすら泣き続ける。
好きだよ。好きだよ、薫。
本当はずっと前から
わかっていたのに
気づかないフリをし続けてきた。
私は薫の友達として
隣にいられるだけで
満足だったはずなのに
やっぱりダメだね。
薫が綾女を見る目は
愛しい人を見つめる目。
私もあなたにそんな瞳で
見られたいと願ってしまった。
私は欲深い人間なんだよ。
薫。ごめんね。
私、もう....
あなたを友達としてなんて見れないよ。
ガチャ。
その時、屋上の扉が
音をたててあいた。
誰か来た。
そう思って無理に涙を
拭おうとすると
「無理しなくていいよ。
もっと泣きなよ。詩織。」
後ろから聴こえる
優しくてクールなこの声は....
私の瞳からまた涙が溢れ出す。
「恋って辛いよ....ゆ....き....」
屋上に入ってきたのは
雪芽だった。
雪芽は何も聞かず
後ろから私を抱きしめた。
あったかい。
友情が
私の恋で冷えた心を
温めてくれる。
私は雪芽の友情に甘えて
彼女の胸の中で号泣した。
私が嗚咽を漏らす度に
彼女は私の背中をさすってくれる。
「私、詩織が咲田のこと好きなの
知ってたよ。」
雪芽は私にそういった。
「えっ?」
思わず顔をあげれば
雪芽は微笑んで
細くて白い指で
私の涙を拭ってくれた。
「詩織を見てればわかるよ。
いつだって咲田の姿を目で追ってさ
咲田と話している時の詩織は
私たちが嫉妬するぐらいいい顔してたよ。
詩織も女の子なんだって
ちょっと微笑ましかった。
私とゆずはたまに咲田に妬いてたんだから。」
「雪芽....
でも、薫には届いてないよ....」
私はここぞとばかり
本音や弱みを見せた。
でも、雪芽は意外なことを口にする。
「そうかな?
詩織が思ってる以上に
咲田って詩織のこと
大事にしてると思うけどな。」
雪芽か笑う。
「咲田の元カノのことも知ってるよ。
工藤綾女ちゃんでしょ?
可愛くて人気あるよね。
水崎新一と付き合ってるって」
「それに詩織の親友ってことも知ってる。」
そういうと雪芽がポンと
私の肩を軽く叩く。
「詩織は詩織が思ってる以上に
みんなから愛されてるよ。
優しくてかっこよくて
でも時にはか弱いところとか
私、詩織のこと、大好きだよ。
私だけじゃない。
ゆずだって
工藤さんだって
咲田だって
みんな詩織のこと大好きだし
みんな詩織のこと心配してるよ。
だから1人で抱えこまないで?
私でよければいつだって
詩織の力になるよ?
詩織は決して一人じゃないんだよ。
それだけは忘れないで。」
雪芽、ありがとう。
雪芽のこと、大好きだよ。
雪芽と友達になれてよかった。
どの言葉も口に出したいのに
涙で口が乾いて
言葉が発せなくて
でも、私はただひたすらに
雪芽の言葉に頷いていた。
と、その時
また屋上の扉が開いた。
そこには....
息をきらして
走ってきてくれた
大好きな君の姿が
目の前にあった。
「詩織!」

