「じゃあな。薫。」

「おぉ、篤人。」

お互い教室が違うので

篤人と別れた。

B組の教室に入ろうとすると

その場で立ち止まっている女子がいた。

よく見ると

軽く震えている。

「大丈夫か?あんた。」

俺は思わず声をかけていた。

でも、俺はこの時になって

児玉詩織の正体を思い出した。

彼女が涙目でこっちにふりかえったとき

彼女はびっくりした顔で

「咲田薫…」

俺の名前を呟いた。





そうだ。

児玉詩織は








綾女の親友だ。

なんで思い出せなかったんだ。

綾女がよく児玉詩織のことを

話していたのに…



にしても

こんなに華奢で

か弱い奴だったか?

綾女の隣で

いつも堂々としている

記憶しかない。

凛々しい後ろ姿しか

想像できなかったのに

今はこんなに…


俺はさっきクラス表の前で

誓ったことを思い出した。

綾女の親友なんかと…

って

最初は思ってたけど

こいつは綾女とは違うんだ。

彼女のこの震えを

俺は止めてあげたいと

俺は本気で思ったんだ。

どうしたらいいのかも

正直わからなかったけど

俺はとりあえず自己紹介をした。

そして…


「俺にとってはじめてのB組の友達は

詩織ってことだ。」

そう言って彼女に微笑みかけた。



彼女は目を大きく見開いた。

そして顔を軽く赤らめた。

その姿に

胸が少しだけ

高鳴りをおぼえた。

いつも強気でクールな印象のある彼女が

か弱くてめちゃくちゃ可愛くて

でも、目の奥には

優しさと愛で溢れている彼女を

この時、はじめて

守ってあげたいと思った。

綾女に負けないぐらい

俺は詩織の親友になろう。

「私だって薫がB組1番目の友達よ。」

詩織がそう言って笑ったから

さらに強くそう思った。








詩織とは友達でいたかった。

俺は詩織の親友で

十分幸せだったのに

詩織の笑顔が

時折綾女と重なる時がある。

ダメだな、俺は…





やっぱり






















綾女が好きなんだな。