「あんた、綾女の…」

そこまでいいかけて

咲田くんは

ハハッと笑った。

「確か、児玉詩織だっけ?」

彼の少し切ない声に

うなずいた。

私の名前、知ってたんだ。

「クラス表の俺の名前の上に

見覚えある名前があって

それが綾女の親友だって

なかなか気づけなかったな。」

独り言のように

彼は呟いて…

「改めて…

俺の名前は咲田薫。

ご存じの通り















綾女の元カレです。」

咲田くんはそういった。


「私の名前は児玉詩織。

知ってると思うけど















綾女の親友です。」



「俺たち、綾女で繋がったんだな。」

彼がそんなことをいった。

「えっ?」

「俺のこと、薫でいいから。

あんたも詩織でいい?」

「えっ、あっ、うん。」

「じゃあ、詩織。

俺にとってB組のはじめての友達は

詩織ってことだ。」

そういって爽やかな真っ白な歯を見せて

彼はニコッと笑った。

その笑顔を見たとき

一瞬だけ

胸がドキッと高鳴った。

でも、このときはそれよりも

友達

ができたことの方が

嬉しかった。

まるで

私の心のなかを読みとるように

彼の笑顔に

とっても安心できたんだ。

「うん。

私も薫がB組1番目の友達だよ。」

この時、確かに私と薫の間には

友情が芽生えたはずだった。



なのに…

どうしてこの友情が

恋に変わってしまったのだろうか。

ずっと薫とは友達でいたかったのに…




どうして?