「綾女。」

親友の声に思わずふりむく。

「詩織、久しぶり。」

「本当に久しぶり。

高校卒業以来だから

5年ぶりだね。」

「そっか。

もう5年か。」

私たちは大人になっていた。

大学も1年前に卒業して

今は一般企業で働いている。

親友の詩織と会うのも5年ぶり。

詩織は夢だった小説家になって

多くの作品をこの世に送り出している。


「この間、詩織の結婚式行けなくて

ごめんね。

絶対にやらなきゃいけない仕事があって

本当にショックだった。」

「いいよ。

かわりにちゃんとあんたの旦那がきてくれたから。」

「まだ旦那じゃないし…」

「じきになるんだから。

別にいいじゃない。」

「よくないよ。

そうなれたらいいけど…」

「綾女って本当に鈍感ね。」

詩織はわざとらしくため息をついた。

「でも、見たかったな。

詩織のウェディングドレス姿。

新一くんに写真で見せてもらったけど

やっぱ生でみたかった。

薫くんにも会いたかったし。」

「薫も綾女に会いたがってたけど

水崎くんが

絶対会わせないって

眉間にしわよせて言ってたわよ」

詩織が思いだし笑いをしている。

「もう!

勝手に一人で思い出さないで。

行きたかったって

またへこむじゃない。」

「まぁまぁ。

ちゃんと綾女の結婚式に行くから

その時に薫にも会えるでしょ。」

「うん。」

大きくてうなずいた。



「綾女、昼休みの時間大丈夫?」

「あっ、ヤバい。

戻らなきゃ。

わざわざ来てくれてありがとね。」

「いいの、いいの。

綾女のおかげで良いアイデアが生まれたし。」

「えっ?本当に?」

「うん。

私たちの青春時代をモデルにした

小説のタイトルが浮かんだから。」

「ねぇ、何々?」

「ちょっと、時間平気?」

「仕事どころじゃないもん。」

「はいはい。」

詩織は少し呆れたように

でも、少し嬉しそうに

カフェのテーブルの上にあった

ナフキンを1枚とって

その上にボールペンで

すらすらとタイトルを刻む。


「どうよ。」

詩織が自慢気に

ナフキンを私の前に置いた。

私は思わず目を見開いて

そして詩織に微笑んだ。

「うん!いい!素敵だね。」

あの頃を思い出す

シンプルだけど

温かい

懐かしいタイトル。




「でしょ。」

詩織が満足気な笑顔を浮かべた。


























そのタイトルは…





















ーーーーーーーー青春の1ページ



だった。