私は隣のクラスを覗く。

いないかな?

「綾女?」

久しぶりに聞いた

クールな優しい声。

たまらずふりかえった。

「久しぶり…

薫くん。」

「どうかした?」

「うん。」

薫くんの優しさに

私はいつだって

救われてきた。

こんなことしたら

期待させんなって

また怒られちゃうかな?

これで最後にするから。

あなたがどう思っていても

私が薫くんと過ごした

3ヶ月は

一生の宝物だったよ。

ありがと。

「これ。」

黄緑色の箱を渡す。

「えっ?」

「これで最後にするから。

もう期待なんてさせないから

これだけは受け取ってほしい。

薫くんが背中を押してくれなかったら

私、あなたをもっと傷つけていたし

彼に告白しようとも考えなかった。

薫くんの言葉に

私は救われた。

ありがとう。

幸せになってね。」

「綾女…」

薫くんの瞳から雫がこぼれた。

「あぁ。ちくしょう。

泣かせんなよ。」

薫くんは自分の目をゴシゴシこすった。

「わかったよ。

これで最後だ。

ありがとう。」

薫くんが嬉しそうに笑ってくれた。

「綾女。

好きだった。大好きだった。

だから幸せになれよ。」

「うん。」

私は薫くんの元から走り出した。