青春の1ページ


咲田薫と工藤綾女が別れた。

その話を聞いたとき

心底驚いたけれど

内心少しホッとした。

なぜ二人が別れたのかはわからないけど

これでまた僕は綾女ちゃんを想える。



「ねぇ、水崎くん。」

隣の席の楠木珠理奈が僕の名前をよんだ。

「んっ?なに?」

「水崎くんって



水崎慎爾くん だよね?」

「はっ?」

予想外の言葉に声が出た。

「なにいってんの?」

僕が珍しく声色を変えたのに驚いたのか

楠木さんは慌ててまくしたてる。

「いや、別に疑ってるわけじゃないんだけど

水崎慎爾くんって

病院に運ばれた時には

お医者さんに手遅れだって言われたって…

それなのにこんなに元気なのって

不思議だなって?

ううん。

きっと嘘。

あんな噂デマだよ。デマ。」

そういって楠木さんは

曖昧に作り笑いを浮かべた。

僕が慎爾じゃないって

バレそうになっているってことか。

そりゃそうだ。

僕は慎爾じゃないんだから

多少ボロが出る。

「ははっ。」

ほろりとわらいがこぼれた。

「どうしたの?」

楠木さんが不思議そうな顔をしている。

「いや、楠木さんって

勘鋭いね。」

もういい。

ありがとう、慎爾。

僕、慎爾になれて

すごく楽しかった。

たくさんの友達。

学校がこんなに楽しかったのは

慎爾にならなきゃわからなかった。

そして…







綾女ちゃんのそばにもいられた。

僕の目的は初めはそれだったけれど

僕は思いがけず色々楽しめた。

神様がこんな僕にご褒美をくれたんだ。

慎爾でいれたこの期間は

僕はとても幸福だった。

「そう。

僕は慎爾じゃない。

慎爾の双子の弟の水崎新一。

慎爾はとっくにあの事故で亡くなってる。」

僕はなんの感情もなく

そういいきった。