新一くんと空き室掃除をした次の日。
私は決めた。
薫くんのことを傷つけないために
私は薫くんに別れを告げよう。
それが私ができる
薫くんへの罪滅ぼしだと信じて
「綾女、帰ろうぜ。」
いつものように薫くんが
私の教室にやって来た。
「うん。」
短い返事をして
私はスクールバックを肩にかける。
校門を出て
いつもの帰り道をゆっくり歩く。
いつもと違って
沈黙が続いている。
薫くんは何か勘づいている。
なんとなくそんな気がする。
私に
薫くんは
チャンスをくれている。
そんな感じに勇気がわいた。
「薫くん。」
「んっ?」
「私、本当の愛なんて信じてなかったんだ。
だから薫くんのことも好きになれるって
信じてた。
薫くんが彼を忘れさせてくれる
運命の人だって。
ずっと信じてきた。」
薫くんは何も言わず
私の言葉に耳を傾けてくれる。
「でもね。
私、3ヶ月たっても
彼が色褪せてないことに
今さら気づいちゃったんだ。
気づかなきゃよかった。
薫くんを傷つけちゃうから。」
「綾女。
俺はとっくに知ってたよ。
綾女が俺を見てないことなんて。
むしろ綾女ははじめから
俺のことなんて
好きでもなんでもなかっただろ?」
私は思わず黙り混む。
「傷つけるなら
徹底的に傷つけて良いって。
こんな状態で付き合っている事態
俺は綾女に傷つけられてる。
中途半端に優しくすんな。
俺はまた綾女に期待する。
それは悪循環だ。
綾女も俺も両方傷つく。
傷のなめあいなんてしたくないだろ?」
そう一気に言い切ると
彼は優しく笑った。
「綾女、いいたいこといってくれ。」
彼の優しくて捨て身な言葉に
私の瞳から涙が溢れた。
そして…
一呼吸深く吸って…
「私、好きな人がいるから。
私と別れてください。」
私は真っ直ぐ彼を見つめた。
「わかった。」
彼はそういうと私に背を向けた。
私は彼に何かを言おうとした。
でも、できなかった。
だって…
彼の肩が小刻みに震えていたから。
彼は泣いていた。
胸がきゅっと苦しくなる。
でも、今さら戻れない。
これ以上の優しさは
彼にとってはナイフだ。
私は彼と反対方向に歩き出す。
ありがとう
私のことを好きだっていってくれて。
ごめんなさい
あなたに好きっていってあげられなくて。
さようなら。
最後にふと小さな声を聞いた気がした。
「綾女、すげー好きだったよ。」
私は彼の優しさにたくさん救われた。
私の瞳からまた涙がこぼれた。
でも、すぐにぬぐう。
私はまた新たな道を歩き出す。
咲田薫くんとの優しい別れを
思い出にして

