「な、何?」

振り向くなんてできなかった。

久しぶりの私を呼ぶ声に

思わず声が上ずる。

「今日、工藤さんと僕、

空き室掃除の当番だから。」

彼は黒板に貼ってあるプリントを指差す。

そうだ。忘れてた。

でも、相手なんて確認してなかった。

嬉しいけど苦しい。

神様はなんて意地悪なんだろう。

「わっ、わかった。」

私は平常心をぎりきり保ってそう言った。

すると…

「うん。ありがと。

先に言ってるね。」

彼らしい最高にスマイルを見せてくれた。

「薫くん。

今日は一緒に帰れない。

ごめんね。」

薫くんにそう話す。

「わかった。

掃除がんばって。」

薫くんは一瞬寂しそうな顔をした。

私が歩きだそうとすると

「綾女のそんな嬉しそうな顔はじめてみた。」

「えっ?」

「ううん。なんでもない。」

少し不思議な気分になったけれど

新一くんを待たせちゃいけないと

私は先を急いだ。