「綾女!」

薫くんの声がC組の教室に響く。

彼と付き合って

もう3ヶ月が過ぎようとしていた。

新一くんを忘れようとしても

忘れるなんてできなかった

この3ヶ月。

薫くんのことも好きだ。

でも、それ以上に新一くんが好き。

私は偽りに愛で

彼に接しているのかもしれない

罪悪感で胸がいっぱいになるけれど

私はまだどこかで信じている。

彼が

新一くんを忘れさせてくれる

運命の人なんじゃないかって

それだけを頼りに

私は最低な

偽りのカップルを続けている。

「かっ、薫くん。」

3ヶ月たっても

この光景はなれない。

薫くんはいつだって

放課後になると

私の所にやってくる。

薫くんの本物の愛が

嬉しい時もあれば

息苦しい時もある。

私は教室のドアに寄る。

「ごめんね。いつもいつも。」

「なにいってんだよ。

俺は綾女の彼氏だぜ。

あたりまえなことしてるだけ。」

スポーツ少年でイケメンな

薫くんの爽やかな笑顔が

泣きたくなるほど

新一くんと重なってしまう。

その笑顔から

軽く視線をそらしてしまう。

私は最低な彼女だ。

「うん。そうだね。

かっ、帰ろっか。

今、荷物とってくる。」

私が机の上にのっている

スクールバックを肩にかけたとき

「工藤さん。」

懐かしくて大好きな

優しい彼が

私の名前を呼んだ。