そんなある日の放課後。

私は隣のクラスの男の子に呼び出された。

確か、名前は 咲田 薫くん。

「咲田くん。話ってなに?」

後ろからふいに話しかけたら

咲田くんの肩が軽く揺れた。

あっ、驚かせちゃった?

咲田くんがゆっくり振り返った。

「来てくれたんだ、工藤さん。」

「うん。ごめんなさい。

急にはなしかけて。」

「いや、いいんだ。」

そういって咲田くんは

優しい笑みをうかべた。

咲田くんなはずなのに

その笑顔の奥に

新一くんが見えて

ふいに苦しくなって

彼の顔が見えなくなる。

「そっそれで咲田くんはどうしたの?」

気をそらすように

話をふりかける。

でも、それが



悪魔の入り口。


「俺、工藤さんのこと…

ずっと好きだった。

俺、絶対工藤さんのこと

幸せにする。

だから…

俺と付き合って欲しい。」



それは紛れもなく

愛の告白だった…

彼の瞳が

私だけをとらえていた。




「…私で…いいの?」

気づいたらそんなことを口走っていた。

「えっ…それって…





俺の彼女になってくれるってこと?」

無意識のうちにうなずいた。

それはまた私が…




逃げた、逃げてしまったってこと。


新一くんへの感情が大きすぎて

苦しくて

だから

彼を…咲田くんを愛せたら

彼を…新一くんを



忘れることができるんじゃないかって…


それは咲田くんに

すごく失礼だって

わかってた。

でも、あなたをわすれることができるなら

私はいくらでも努力しようって思う。

だから…

「咲田くん。

私、あなたの彼女になるよ。」

それが私の…


愛のない決断だった。

私は残酷なことをしてしまった。

咲田くんにたいしても…



新一くんにたいしても…