美風とベッドで絡まりあう。
それが物凄く悲しい。
愛がないのが痛いほどわかる。
こんなことをしていて
美風も僕も本当に幸せなのだろうか?
綾女ちゃんを忘れられない自分で…
「新一、何考えてる?」
珍しく美風が柔らかい声を出す。
「彼女のことでしょ?」
今度は美風は意地悪く笑う。
でも、その笑みに怒りはなかった。
だから、素直に応じる。
「うん。ごめん。」
「そっか、そうだよね。」
不思議と美風が可笑しげに笑った。
「今日は素直だね。美風。」
僕も本音をこぼす。
「新一が彼女を思っているなら
彼女ん所行ってもいいよ?」
僕は思わず目を見開く。
「いいの?」
「うん。」
「どんなに身体で繋がっても
心で繋がっていなかったら
愛でも何でもないよね。」
美風が淋しげに呟く。
美風も気づいていたんだ。
「美風、ありがとう。」
僕はベッドからはいあがる。
衣服に袖を通している間
美風が笑ってこっちをみていた。
「最初は身体だけで良かったんだけどね。
だんだんあなたの間に
愛を欲するようになっちゃった。
これって完璧に私の計算負け。
新一の完全勝利。
ちゃんと幸せにしてあげてね。」
そういって美風は僕の唇にキスを落とした。
「さよなら。新一。」
美風は泣いていた。
でも、僕は彼女の瞳を拭えない。
今、僕の優しさが
美風にとっては
苦しいだろうから。
僕は何も言わず
白石美風の部屋から姿を消した。

