「綾女?大丈夫?」

親友の児玉詩織が私の顔をのぞきこんだ。

「えっ…ごめん。詩織、なんか言った?」

「本気だったんだ…水崎君のこと。」

水崎…

その単語を聞くだけで涙がこみあげてくる。

「あぁ…ごめん。綾女、泣かないで。」

詩織が私を抱きしめた。

その温もりが寂しさをなお一層募らせる。

だから強がった。

今なら思う。

あのとき、強がらずに
詩織の胸で泣いてれば良かった。

そうすれば水崎新一には会わなかったから。


走った…
ただひたすらに

たどり着いたのは

人気のない屋上。

慎爾くん…
私が素直になれてたら
貴方は死ななかったかな?

後悔し続けても彼が戻ったくるわけないのに
後悔し続けるしかないの。

貴方のコトが今でもこんなに好きなのに…
1日たりとも忘れたことなんてないのに…

私が素直になれなかったから
きっと罰がくだったんだ。

その償いに今、胸がはちきれそうなぐらい苦しい。

気づけば屋上の手すりに手をかけていた。

逃げてるって思われてもかまわない。

貴方がいない世界なんて生きてる意味がない。

貴方に会いたい。

あの世界でも構わないから貴方に今すぐ会いたい。

頭の中に残酷な考えが浮かんだ。

貴方に会えるなら…

死んだってかまわない。

手すりを越えようとしたとき…

「綾女ちゃん。」


懐かしい声に涙が溢れた。

まさか?もしかして?

思わず振り返る。

「慎爾くん?」

私の目の前には慎爾くんがたっていたの。

思わず彼の胸に飛び込んだ…


消えなかった…

本当に慎爾くんなの?

「慎爾くん。」

「…」

「素直になれなくてごめんね。
でも、私…慎爾くんのこと



好きだよ。」


やっと言えた。

「綾女ちゃん…
僕も好きだよ。」

「本当に?」

やっと通じあえた。

でも…神様は…

「でもね…僕は…慎爾じゃないんだ。」
「えっ?」

やっぱり変わらず残酷だった。

「僕は…慎爾の

双子の弟…



水崎新一…」


「水崎…新一くん?」

一気に体の力がぬけて
彼の胸から滑り落ちた。

彼は私を抱き止めた。

でも、私は放心状態で…

「なんで…嘘なんて…ついたの?」

「…」

「ねぇ…なんで…」

私の頬から涙が伝ってこぼれる。

新一くんが口を開いた。

「綾女ちゃんが…


好きだから。」

新一くんのその一言がすべてのはじまりだった