「ねぇ、綾女。」
「何?詩織。」
お昼休み
詩織と二人でお弁当を食べていると
詩織がにやついた顔で聞いてきた。
「どうなのよ!皆藤理央は
やっぱり水崎慎爾がいいの?」
詩織は私の恋路に興味津々のようだ。
でも、残念ながら
「詩織が思ってるような展開はないね。」
「えっ?どういうこと?」
私は苦しかった。
慎爾くんが好きなのは
今でも事実だ。
でも、今の慎爾くんは
慎爾くんじゃない。
新一くんだから。
「…詩織…」
「んっ?」
私は今までのことをすべて話してしまった。
慎爾くんは私を助けて死んだこと。
慎爾くんに双子の弟がいること。
その弟の名前が新一くんで
そして慎爾くんと瓜二つなこと。
そして…
今新一くんが慎爾くんのふりをしていることも
全てを洗いざらいに話したら
私はまた泣いていた。
詩織は理解がはやかった。
冷静でかつ賢い詩織は
私よりずっと大人でずっと綺麗な女の子。
泣きながら話す私の背中を
さすりながら話を聞いてくれた。
私が話終えると
「ありがとう。話してくれて。」
詩織はそういって優しく微笑んだ。
「なにか隠してるとは思ってたよ。」
「えっ?」
「私が前、水崎慎爾くんのお見舞いにいったとき、植物状態だったんだよ?
それがあんなに回復する?奇跡?
おかしいよね。矛盾してる。
それに、水崎慎爾くんが帰ってきたのに
綾女、全然嬉しそうじゃなかった。
それどころか苦しそうで
いつも泣きそうな顔をしてる。
何度も聞こうとしたけど
何度も言葉を飲み込んだ。
いつかきっと本当のことを話してくれる。
待ってたかいがあった。
綾女、ありがとう。」
そういって詩織は私を抱きしめてくれた。
詩織の深い優しさが私を包み込んでくれる。
「…しっ詩織…
あっありがとう。」
「えっ?」
「詩織が待っててくれたから
詩織が私を信じてくれたから
私は今、
詩織の胸で精一杯泣ける。
ありがとう。」
詩織は嬉しそうに目を細めた。

