クラスに転校生がやって来た。
名前は皆藤理央。
綺麗で優しい笑顔が
女子たちの人気を集めているらしい。
男子たちからも
ノリがよく、付き合いやすいらしくて
評判だ。
最初は転校生なんて
どうでもいいって思ってたんけど
そういうわけにもいかなくなった。
なぜなら
「ねぇ、理央。この問題わかる?」
「綾女、わかんないの?」
「お願い、教えて。
たぶん、次、あたる。」
「わかった。いいよ。
だから泣きそうな顔するな。」
そうして皆藤は綾女ちゃんの頭を
軽く撫でた。
皆藤理央は綾女ちゃんの
昔の幼なじみらしい。
これは慎爾よりも
恐ろしい敵が現れたみたいだ。
端正な顔立ちに
男女問わず人気のある
優しい幼なじみ。
マンガのような展開に
戸惑いが隠せなかった。
というより
綾女ちゃんは人気がありすぎる。
綺麗で可愛い整った顔に
細くて健康的なスタイル
テストの順位は
いつも、上位に君臨する賢さ
そんな自分の美しさに
気づかない天然ぶりと
決して鼻にかけない謙虚さ
優しくて友達思いで
いつもたくさんの友達に囲まれて
笑った笑顔はいつだって眩しかった。
僕はかなり重症だな。
そんな自分に笑えてしまう。
綾女ちゃんがいなかったら
僕はとっくにこの世界にはいないだろう。
だから、僕は綾女ちゃんに感謝したい。
綾女ちゃんの笑顔が僕に希望をくれた。
だから…
綾女ちゃんは誰にも渡さない。
それが慎爾であろうと
皆藤理央であろうと
どんなライバルであろうと
僕は綾女ちゃんのために生きる。
僕はこのときまで
綾女ちゃんを誰にも渡さないという決意を固めていた。
この決意が崩れることは決してないと思っていた。
しかし…
この決意はのちに
涙に変わって崩れることを
このときはまだ知らなかった。

