お父さん・・・。はきそう・・・。」



 長時間の山道ドライブで僕の三半規管は瀕死状態だ。
 頭がぐるぐるする。

 「旅館までもうちょっとだから吐くんじゃないぞ。」


 元はと言えば、山奥で休暇を過ごしたいって言い出したお父さんのせいなのに、その言いぐさはひどいじゃないか。という思いは喉まで出かかったが、飲み込むことにした。



 何が他の楽しくて、山奥でせっかくの夏休みの一週間を過ごさなくてはいけないんだ、というのが今の僕の本音だ。



「ほら、ついたぞ。」



 バタンっ、と車のドアを閉める音の後に、ずっと車内にいて気が付かなかったが植物と土の匂いが混ざった風が鼻の中を通って行った。


 きれいなとこだな。



 第一印象はそんなとこだ。


 微かに湿った風の匂いと、太陽の温度が混じった空気や、日差しを遮る林。


 「おいっ・・・!!どこに行くんだ!?。」