「お姉ちゃん、泣いてるの?」

義徳の家から帰ってすぐ部屋に籠もったわたしを見て、怜央が心配してやって来た。

「怜央はいいの?義徳が遠くに行っても」

「遠くっていっても、外国に行くわけじゃないでしょ?東京なんてお隣だよ、電車に乗ればすぐだよ」

そうだけど、そうじゃないよ……

義徳が本気で芝居を仕事にしたいって、前から分かっていた。

夢のためにはどんな困難にも立ち向かうことも。

もし義徳が夢をかなえたら、きっと手の届かない所に行ってしまう。

「お姉ちゃんは、義君が本当に好きなんだね……」

「うん、自分でもどうしようもないくらい……」