秘密の特訓



練習一週間目の放課後。

「…ん、まあまあ良くなって来たな。コツ掴めたか?」

「なんとか…」

「コツっつっても何も考えねー事だな。変な事考えてっと そっちに意識が向くから。自然でリラックスしろ

緊張すんな。聞いてる客、生徒を喜ばせるように。笑顔にさせるために歌えば良いんだよ」

「…分かった。ありがとう桐谷くん!!」

「別に。これ、やるから食っとけ。んじゃ俺はバイトあるから、またな」

そう言って私にくれたのは のど飴だった。

少しだけ喉が痛くて帰りに買って帰ろうかな、って考えてたときにこの様。

嬉しすぎて、桐谷くんがくれた飴を見るだけでも頬が緩んでしまう。

気が利くのか、当日に備えてなのかは分からないけど、こんな些細な事でも私の心は有頂天になっている事は確かだ。